福島高校ニュース

2015年4月の記事一覧

International Meetings of Radioprotection 参加


 3/23
25にフランスのCadaracheで開催されたInternational Meetings of RadioprotectionLes Rencontres Internationales de la Radioprotection)に参加しました。

 このMeeting2008年からフランスで開催され,福島高校は昨年より参加しています。今年は生徒3名が参加し,2つの口頭及びポスター発表を行いました。


 今年は高校生120名,教員・研究者など20名が参加して開催されました。参加国はフランスはじめ,モロッコ,ドイツ,モルドバ,ベラルーシなどに及びます。
 参加校の発表については以下をご覧ください。

 福島高校の発表題とスライドは以下のとおりです。
D-shuttle project: Individual Dose Measurement of High School Students Inside and Outside Fukushima
D-Shuttle Project.pdf
Discrepancy inside Fukushima, and between Inside and Outside Fukushima

 一方は福島の高校生の個人被曝線量を国内外の高校生と比較したもの、他方は福島の困難の一端をわかり易く示したものです。どちらも発表後,盛大な拍手をいただくことができました。参加者の感想は「最近はニュースで福島が取り上げられることがほとんどなく,ようすがわかってよかった」というものでした。生徒たちは,最後までプレゼン作成に余念がなく,発表の直前まで修正を行うなどよく頑張り,また質疑応答にもしっかりと答えることができ,とても満足気でした。
 午後からはポスター発表。こちらにも多勢が訪れ2時間休みなしの対応でしたが,多くの方々に関心を持っていただくことができました。口頭ポスターともに発表は成功裏に終えることができました。発表準備でお世話になりました皆様,本当にありがとうございました。





 翌日はLycée Notre-Dame (Boulogne校)の授業参観とキュリー博物館の見学。キュリー博物館では,館長さん直々にマリーの生涯について詳しく説明してくださり,ピエゾ効果を用いた天秤による線量測定法を演示していただきました。さらにマリーの執務室や実験室にも入れていただき、執務室では特別にマリーの机で記念撮影させていただきました。



 機内泊を含め7泊8日の旅はあっという間に過ぎ,充実した1週間となりました。

 以下は生徒の感想です。 
その①
 それぞれの国の高校生が、放射線防護に関する独自の課題を見つけて、それに対する意見を深めている姿に刺激を受けました。
 放射線についての評価はさまざまな場所で聞きますが、今まで放射線「防護」について議論する場があまりなかったので、新鮮でした。リスクとコストと人の心のバランスをはかることは難しい課題ですが、この発表会で視野が広がりました。自分なりに考えを深めることができそうです。
 私たちや早野先生のプレゼンのときは、会場の雰囲気が明らかに変わったのを感じました。まずは科学的事実を知ってもらって、それから福島の評価や、社会的な問題についてそれぞれに考えてくれればいいなあ、と思って取り組みました。
 ポスターセッションでは、たくさんの人に「午前中のプレゼンのおかげで、福島への認識が変わったよ」などと声をかけていただきました。自分の役割を少しは果たせたと充足感を感じました。一方、木戸ダムの水の質問でNOと答えた人が意外と多かったので、その人たちの意見を聞くことで、科学的事実と人の心の間にある溝の原因が少しわかった気がしました。

その②
 このワークショップに参加した人はセシウムよりもプルトニウムやウランに関心があることがわかった。また、放射性廃棄物が大きな問題となっており、多くの国(モルドバ、フランス、ドイツ、ウクライナ、モロッコ)で発表されていた。特にモルドバはロシアからの放射性廃棄物を多く取り扱うらしく、処理しきれない、費用がない、場所がないというのが大きな問題だった。そして放射性廃棄物の処理の仕方の仮説の一つにロケットをつかって宇宙に飛ばすというのが印象的だった。
 他に、放射性物質を用いた医療において、放射線は幹細胞にどのような影響を与えるのかという発表が印象に残った。
 またポスター発表では、水源の泥の汚染が問題となっている楢葉町の水道水について紹介した。あなたはこの水道水を飲むかどうかという質問に対して、5:4で「飲む」という方が多かった。理由として、政府が大丈夫といっている、科学的に大丈夫だと言われている、年をとっているから環境が変わるのがいやだ、というものがあげられた。また「飲まない」と答えた人のうち、ドイツの方はナチスのことがあり政府をあまり信用しないからというものや、泥が高い放射性物質を含んでいるから、と福島でも見られるような答えが多くみられた。もし、この質問が日本で行われたなら、逆の結果が得られるかもしれない。
 今回、海外の様々な考え方を知ることができてよかったと思う。

その③
 海外の人たちは福島に対して悪く思っているというよりは、よくわからない、といった意見がありました。情報が手に入りにくく、福島について知る事が出来ないという人たちが多かったように感じられます。その点に関しては、福島の現状を伝える事ができたと思います。私たちのプレゼンのあとで、福島に興味を持ってくれた高校生が増えました。ポスターセッションの際に福島の問題について話したり、より詳しく福島の現状を知りたいといった人達もいました。実際に海外の高校生達と話してみて、福島に対して偏見は無いが、情報が少ない、わからないなどといった事が問題であると考えます。今回のプログラムでほとんどの生徒が福島についてよくわかった、危険だと思っていたがデータをみて安全だと言う事がわかったなどと言っていました。明確なデータを示すことで福島の状態を知ってもらう、そういったことが重要、そして可能なのだとわかりました。
 また、ホームステイ先も良い方たちで、非常に楽しい時間を過ごす事ができました。今から8月が楽しみです。フランスではだいたい英語でも大丈夫ですが、やはりフランス語が出来ないと不便なので、フランス語の習得を新たな目標としたいと思いました。

最後に引率者の感想です。

 福島高校は、2つの発表を行った。1つ目は福島の高校生の個人被曝線量を国内外の高校生と比較したもの、2つ目は福島の困難の一端をわかり易く示したもので、前年以上に福島の状況をうまく伝えることができたと思う。また生徒自身も発表者を務めたことで、放射線や福島の状況への理解をかなり深めることができた。その点今回の発表に参加したことの教育的意義はとても高いといえる。

 成功裏に終えることができた背景には、まず線量計測に多数の学校と関係者の協力が得られたこと、事前研修を充分に行うことができたこと、英語力の高い生徒の参加があげられる。計測に協力して下さった国内外の多数の生徒と先生方、事前研修で貴重なご指導を頂いた講師の方々、線量計を提供して下さった千代田テクノル・堀場製作所、また本校英語科およびALTのバックアップに、心から感謝申し上げたい。

 ポスターセッションでは「楢葉町の水道水を飲むかどうか?」という本校生徒からの問いに対し、多くの参加者からお答えいただいた。結果は20対16で飲む方が多かったが、このワークショップの参加者でさえ、9人中4人は飲まないと答えることに問題の難しさを改めて感じた。

 帰国後も内外から多数のご意見を頂き、反響の大きさを感じている。その中で、いまだに高線量の避難地域が存在し当面帰還できない地域があることへの言及がない、というご意見を頂いた。もっともなことだと思う。ただし、今回の調査は高校生(わずかに教員も含む)の個人線量調査であり、一般人への調査とは異なることを強調したい。福島の現状を一言で語れないことは、福島県民の一人一人が感じていることであるが、大小の差はあっても放射線についての不安は多くの県民が抱える不安であり、今回の調査は福島県内の主要都市で暮らす高校生の個人線量を他地域と比較することで、福島の概況把握を試みたものである。また、D−シャトルデータは生活記録と見合わせることで生活場所ごとの線量比較が可能であり、高校生の生活はほぼ家庭と学校の往復で比較が容易であるとして調査対象に選んだ。この分析は今後の宿題である。許されるならば、さらに対象を広げた調査にも取り組んでみたい。

 ところでフランスの高校生が、発表の中で度々ALARA(as low as reasonably achievable)の原則に言及していたことが強く印象に残った。発表は、放射線の計測、医療での放射線利用、廃棄物管理など多岐にわたるものだったが、それぞれの研修場所でALARAの原則が取り上げられてきたことがわかる。被曝は、経済的・社会的な要因も考慮した上で合理的に達成できるかぎり低くしよう、という考え方がALARAの原則であり、そこにはリスクバランスの視点が込められている。リスクのバランス点をどこにするかは最終的には個人や社会の判断であり、適切な判断のために放射線防護に関わる多様なものの見方・考え方を知る必要がある。放射線防護に関わる多様な知見を文化と呼ぶ理由はここにあるのだと思う。高校生の発表で、ALARAの原則がたびたび紹介されたことからも、このワークショップがまさに放射線防護文化を高めるために開催されていることがよくわかった。

 リスク管理概念は放射線に限ったことではないが、放射能汚染というこれまでにない不安要因を抱えた私たちは、放射線防護文化を高めていく必要にせまられている。3・11以前の福島に放射線防護文化の充分な蓄積がなかったことは残念であるが、様々な国の高校生が各自の学びを持参して集まり発表を行うワークショップは、とても優れた高校生の学びの場である。福島高校の生徒たちにはぜひ来年以降も参加し、他の国々の高校生とともに放射線防護文化を高める活動に関わって欲しいと思う。
(以上)